2.5 語学の勧め
吃音のしくみについて詳しい医学論文とかあるのでしょうか。神経的なものや器質的なものなど。なにか詳しい、吃音の研究があれば、吃音の悩みがある者にとって、具体的な改善方法が教えてもらえそうで期待できるのですが…
以前、言友会という吃音のコミュニティーに参加したことがあります。集まって、自分の状況の話など悩みの打ち明けをしたり、言語聴覚士の人が来て講演会をしたりしていました。私は始め、貴重な経験を積めると喜んでいたのですが、具体的な進歩が私自身に望めない気がして、半年もたたずに辞めてしまいました。
私は職場の研修で半年ほど、東京の語学学校に通い、中国語を習ったことがあります。
その時、吃音に変化する瞬間を体験しました。
中国語は、発音がひどく難しく、母音、子音が多数あり、あげくに四声という独特のアクセントがあります。
そのため、講師の先生は、まず、母音や子音の発音を覚えさせることを重視して、2か月ほど、ずっと発音練習をさせられました。
…それが、その発音練習中、どれくらい言わされようと、一度もどもることはありませんでした。
正直、緊張する場面ですら、一度もつっかかることがなかったのです。
私としたら、びっくりしました。
ちなみに、英語はほとんどどもらないので、中国語も似たようなものになるのかも?と淡い期待を寄せました。
そして、発音練習から簡単な単語となり、挨拶、軽い会話練習と語学は進んでいきます。
それは、会話練習の時に突然起こりました。
「一定」という言葉の時です。中国語では「きっと、絶対」というような協調するニュアンスの意味になり、発音は「イーディン」となります。
この言葉がテキストの会話に入っている時でした。
突然最初の「イ」が出てこなかったのです。
講師の先生はびっくりした様子でした。私が突然つかえたようになったので、発音方法を忘れたのかしらと思ったようでした。
とはいえ、その時はまだまだ初級、「一定」の字の上には発音記号であるピンインが印字されています。発音が分からないはずはありません。
私はなんとか声をふりしぼって発音しました。
私は先生以上に動揺していました。吃音というのは事前に予感があり、その予感通りにどもるので、どもる前に別の言葉を入れたりして、ごまかす方法を考えるのですが、この時予感は全くありませんでした。突然だったのです。
その後、「一定」が全然言えなくなり、挙句にほかの単語も言えない言葉が出てきました。
それまで話せていたのに…にです。
どうしてその時「一定」が突然言えなくなったのか?
私はそれが吃音のしくみのような気がします。
当時、研修員の間でいざこざがあり、私も困惑していた…というストレスのある環境でした。でも、それだけでしょうか?
話すことを意識しすぎたのかもしれない…とも思いますが、それなら発音練習はもっと意識するのにどもらなかったので矛盾します。
まるで、忘れていた吃音を突然体が思い出したかのような瞬間でした。
吃音は体の癖なのか、それとも神経的なものなのか…?よく分かりませんね。
ちなみに、現在、中国語で吃音になることはありません。
それは改善されたというより、中国語を話すとき、単語を思い出すのに必死で吃音になる余裕がない…という感触です。
もっと流暢に話し出せば、また症状が出てくるのではないかと思ったりします。
まあ、例え吃音状態になっても、「外国語」ですので、相手の人は「あ、発音忘れたんだな。単語忘れたのかな」程度に思って、気にも留めないので、ある意味、私は楽ですけれどね。